城山熊野神社の「鎮守の森」
城山熊野神社は、板橋区のほぼ中央部、荒川を臨む志村台地上にあります。志村熊野神社は志村城山遺跡にあたり、城山幼稚園の建て替えの際には発掘調査が実施されています。調査の結果、弥生時代後期の環濠や、奈良・平安時代の集落跡が発見されました。また、江戸時代につくられた『新編武蔵国風土記稿』※には、1500年代に志村城という城郭があったという記録があります。
1万年以上の時間の中で歴史を重ねてきた城山熊野神社の森。素直に考えると、自然植生が残っている可能性は低いように思えます。実際に、日本の暖温帯林の99%では、その自然植生が失われています。そのため、社寺の森に必ずしも自然植生が残されているということはできないのです。
しかし、2018年に行った調査により、城山熊野神社の境内に広がる森は、自然植生が残る「鎮守の森」であることがわかりました。
調査を担当した宮脇氏の弟子である国際生態学センターの目黒伸一氏は、宮脇氏の言葉を引用しながら「特定の宗教を強く信仰することが少ない日本人ですが、道場や球場に入る時に一礼をする習慣などに、場を尊ぶ精神を見ることができます。時代によっては、火を起こすために木を大量に伐採した時代もあったはずです。しかし、そんな時代の中にあっても、神を尊ぶ気持ちがこの森を残したのではないでしょうか」と語られています。
※『新編武蔵国風土記稿』間宮士信等編